挿し木概論 | 神多野園芸

2019/01/27 22:51

○はじめに


以下は樹木の挿し木について、簡単且つ取り急ぎ纏めたものである。
読み辛く、分かり辛い点も多いと思う。
また、基本的且つ大まかな内容であり、樹木の種類によっては異なる場合もある。
挿し木の方法及び流儀は、同じ樹木でも実行する人の技術や設備・好み等で変わる。
上記を踏まえ、参考程度と考えて頂きたい。



○挿し木の季節


挿し木に適した季節は、樹種と方法等に因る。
特に適した季節(関東準拠)は、冬が明けて本格的に成長する直前の3月頃、春に成長した枝が固まった初夏、雨が多くて湿度を保ち易い梅雨、同じく雨が多くて冬に向けて成長が穏やかになる秋頃が挙げられる。設備や技術によっては、他の季節でも十分挿し木は可能である。



○穂木


挿し木に使う枝は、新梢(新たに伸びた枝)が良い。
展開したての新梢は柔らかすぎるので、挿し床に挿せる程度の硬さになった枝が良い。


挿し木は発根するまでの間、穂木に蓄えられた栄養で生きる。
その為、穂木を採取する際は、充実した健康な枝を選ぶ。
それはつまり、健康で充実した親木を育てて用意する必要があるという事でもある。
また、穂木を採取する樹木は、樹齢が若い個体が望ましい。挿し木が発根する確率が高い。
古い樹木から穂木を採取して挿し木すると、成長が遅くなったり、早くから開花し始めたりする事がある。

逆に開花を早くしたい場合、わざとそのような樹木から穂木を採取する方法もある。
尚、ツツジ等、若木の頃から開花するが、発根し易く且つ成長旺盛な樹種もある。


穂木を採取したら、挿し穂に適した形状に調整する。
穂木の長さは、おおよそ10~15cmが目安。
挿し床に挿す先端を、切れ味鋭い刃物で楔形か斜めに整える。
挿し木に限らないが、切れ味の悪い刃物で切断すると、切断面が潰れて癒合と再生に良くない。
葉の枚数や面積が多いと、水の蒸散量が多くなり過ぎるので、適宜減らすと良い。
広葉樹の場合、葉の枚数が2~3枚、葉の面積が2分の1~3分の1が大まかな目安。


穂木を採取・調整したら、切断面を水に浸け、十分に水を吸わせる。
吸水する時間は、穂木の長さや種類、状態、作業する人の好み等にも因る。
短い穂木とはいえ、根がないので吸水する力は弱い。
当方は2~3時間、若しくは半日ほど吸水させるが、人により差異が大きい気がする。
挿し木の前と後に係わらず、挿し穂が水分不足の場合、高確率で挿し木に失敗する。
穂木の採取から水を吸水させるまで、迅速に行う事が望ましい。



○挿し床


挿し床とは、挿し木をする苗床の事。挿し木をする用土とその容器に分けられる。

容器は挿し木の本数に合わせて選ぶ。専用の容器の他、少量ならば植木鉢でも良い。

用土は無菌が好ましい。用土の主な種類として、赤玉土・鹿沼土・バーミキュライト・パーライト・ピートモス等がある。

排水性と保水性がそれぞれ違うので、挿し木する樹種に合わせて選択する。
単一の用土で行う事も有るが、複数を適切な配分で混合して用いる事も有る。
挿し木の用土として袋に入れられて売られているので、それを使うと手軽である。



○挿し木


挿し穂を挿し床に挿し木する際、真っ直ぐ挿すより斜めに挿す方が発根し易いらしい。
とはいえ、それより管理方法その他諸条件の方が影響が大きい。
挿し木後はたっぷりと灌水する。


挿し穂と用土の間に隙間があるのは宜しくない。隙間を埋める為に、挿し穂を用土に指で押し付ける様に挿したり、

挿し木直後の灌水の際、如雨露等の蓮口を下向きにして灌水し、水の勢いで挿し穂と用土の隙間を埋めたりする。


根がない挿し穂は乾燥が苦手なので、挿し木後は定期的に灌水して、湿度を高く保つ。
挿し木後数日は特に注意。その後、徐々に灌水の頻度を下げ、湿度を調整する。


湿度を維持と風除けの為、挿し床をビニル等で覆う事が多い(密閉挿し)。
同時に、寒冷紗で直射日光を避けて温度を下げ、挿し穂の蒸散量を減らす事も併用される事が多い。
温度や湿度は樹種によって好みが違い、その時の気候でも違う。
ビニルで覆うと温度が急上昇した時に難しい。要注意。必要に応じて、上部に隙間を設ける等、温度を下げる工夫も必要。
挿し床の温度と湿度の管理はとても影響が大きく且つ難しく、個人的に挿し木の肝だと考えている。
各人が工夫を凝らし、苦心している。正解に至る道は1つではない。


温度(挿し床の地温)は高いと良いが、高すぎると良くない。おおよそ25℃までが良い。
また、挿し木は頭寒(挿し木の地上部分が、地下部分より温度が低い)だと発根し易い。
その為、特に冬は、電熱線や温水の通う管等で挿し床を温めて、頭寒を保つ方法もある。


設備やビニル等を使わず、半日陰に挿し床を設置して、灌水しながら管理する方法もある。
樹木の下は、枝が屋根になって半日陰になる。

ビニルで覆う密閉挿し等と比べ、設備が要らないので手軽な他、春から夏に温度が急上昇し辛い。
優れた方法ではないが手軽なので、趣味で挿し木をするには一考に値すると思う。



○発根までの期間


挿し木をしてから発根までの期間は、樹種による違いが大きい。
直ぐ発根する樹種もあれば、2年ほど掛かる樹種もある。
また、挿し木をする季節にもよる。成長が止まる冬をはさむと、当然時間が掛かる。



○最後に


樹種によって挿し木の難易度は全く違う。
また、普段は挿し木に成功する樹種でも、時には失敗する事もある。
経験を積んで工夫を凝らし、次の成功を目指す。
失敗しても根気強く、何年も続けていくと良い。